乱読暴読事後報告

 案外語呂がいいな。

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 感想。普段滅多に書かないけれど。
 ハードカバーだった頃から読みたかったんだけれどハードカバーが買えなくてずっと落ちるのを待っていた作品。待った甲斐があった。いい作品か悪い作品か、っていうのは知らないけれど、里村的に好きなタイプ。恋愛とはまた違ったこういう親愛っていうのがとても好き。
 小川洋子はそんなにたくさん読んだわけじゃないけれど、なんとなくイメージとして連作短編をまとめると長編になる、っていう感じの印象。『沈黙博物館』しかり『薬指の標本』しかり。各章が断絶しているって訳じゃなくて、日常をいくつも積み重ねてそれ単体で小さな山とオチがあるんだけれど、全部まとめて見ても一つのお話になっている、っていうイメージがある。たまたま里村が読んだこの三作がそうなのかもしれないけれど。まあ、その可能性の方が高いだろう。長編は三作しか読んでいないんだから。
 あ、短編は他にも読んでるから。
 で、これもそんな感じ。私とルートと博士とそれを取り巻いているわけでもないけれど登場する少数の人々とのお話がいくつか書かれていて、そこから色々読み取る感じ。断定されていることは少なくて、私の予想とか、ルートの考察とか、それだけで、実はこうだったのだ、ということは少ない。私やルートや里村が察することで博士と彼のお話を感じていくような。
 ほよほよしているようで、実はがりり(レモンを噛んだわけではない)、と抉るようなこともあったり。でも全体的にのっぺりした感じ。のっぺりしているけれど里村は読んでいてだれなかった。のっぺり、というより、のたり。いや、な行じゃないな、この感じは。ほのほの。ほのぼのじゃなく。ほのほの。